なんでもない

何も書かずにいることは私にはできなかった。

新年になって、唐突な知らせが来た。 これを読んでいる人には特別説明が必要ではない気がするが、言ってしまえば訃報である。

この知らせを聞いて、みんな口に出さずとも、各々が各々の想いと向き合っているような、そんな雰囲気のタイムラインだった。 今は、私は昨日から2夜連続で論文の詰めをやっていて、VRChatに入れる状況ではない。

私はと言うと、このことについては何を言っても無粋になってしまうからできるだけ何も言いたくないけど、何か言わなければ気が落ち着かないような感じがして、結局こうして文章を書いている。 きっとこんな時くらいはカッコつけるな、と言うことなんじゃないかと思うが、よくわからない。

何を言いたいわけではない、ただ何か述べておかなければ気が落ち着かないから、この想いを消化できないから、そう言う理由だけで今文章を書いている。

知らせを聞いて最初のうちは、心理的な防衛の機微のせいか、漠然と他人事のようというか、「そんなに関わりがあったわけではないしな」、みたいに感じていた。 けれど、論文添削の合間の休憩中に、急に過去の思い出が脳内で発火して、線香花火のように淡く散っていった。

確かにあの日、あの目にくまを持ったルナトくんは、時間を、そして仮想の空間を共にしていたのだ。 ネームプレートの文字はずっと前から黄色で、他人なんかではなかった。 ある日はもう内容も思い出せないくらいたくさんの世間話をして、ある日は私とかきねゆとりのしょうもない掛け合いを笑って聞いていてくれた。

想いがどれだけ大きくても、私たちの前に横たわる日常は何も変わらず進んでゆく。 そしてそんな日常に飲み込まれてしまわないよう、この感情を思い出したい時に思い出せるように、こうして言葉を綴るのだなと、そう思った。

私たちは前に進む。 でもたまに後ろを振り返っては微笑んでみようと思う。 この思いは、彼と過ごした時間は、きっと私と過去の接続点になるのだろうと思う。

私は今一人だけど、今日論文を投稿したら、VRChatをしたい。 別に口に出さなくとも、今は時間を、空間をみんなと共にしたい。 人間にはきっとそう言う時間が必要だと思う。

「中央線が止まっても 最終に乗り遅れても この生活は終わらない」